歌ってみたや歌枠で、声がこもる、「ぱ行」の息の音が入る、サビで音が歪む。こうした悩みは、部屋の反響、マイクとの距離と向き、録音レベル(ゲイン)を見直すと、直せることがあります。マイクを買い替える前に、メーカーの公式の説明で確かめておきたい点を、録る順に説明します。
この記事のポイント
- 部屋は、硬い面の反響を、枕や布団、カーテンなど柔らかいものでやわらげます
- 指向性のあるマイクは、近づくほど低音が強まります(近接効果)。強まりすぎたら、数センチ離します
- 「ぱ行」の息は、ポップフィルターと、マイクに少し角度をつけて歌う方法で抑えられます
- 録音レベルは、赤いゾーンに入らないように決めます。Focusriteは、例として、ピークが−12dBFS前後の録音を挙げています
- 伴奏と自分の声は、ダイレクトモニタリングで、ほとんど遅れなく聴けます

01部屋の反響:硬い面を柔らかいもので減らす
Shureは、浴室のように硬い面が多い部屋は、音が反射して不要な響きが入るので録音に向かないとしています。向いているのは、枕、クッション、植物、本棚、カーテンなど、柔らかいものが多い部屋です。マイクの後ろに枕や掛け布団を置くと、反射した音を吸ってくれます。さらに響きを抑えたいときは、布団の中で録る方法も紹介していますが、かなり暑くなるので注意するよう案内しています。
RODEは、エアコンやファン、交通の近くなど、騒音の多い場所にマイクを置かないよう案内しています。ノイズ対策の設定は、「配信のマイクのノイズを減らす方法」で説明しています。
02マイクとの距離と向き:近づくと低音が増える
Shureの解説によると、指向性のあるマイクは、音源に近づくほど低音域の出力が高くなります。これが近接効果です。声に深みが出る一方で、強すぎると声が濁って聞こえます。近接効果を抑えたいときは、マイクを音源から数センチ離します。
まず、いつもの歌い方のまま、口とマイクの距離を数センチずつ変えて録り、聞き比べます。声が濁らない位置が見つかれば、その位置を目印にします。
03ポップノイズ:息が当たる「ぱ行」を抑える
「p」や「t」のように、息が強く出る音がマイクに当たると、ボッという破裂音が入ります。これがポップノイズです。Shureによると、ポップフィルターで抑えられます。ShureはSM4にポップフィルターを付けた場合の目安を、口から約15cm(6インチ)としています。大きな声で歌うときは、正面ではなく少し角度をつけて歌うと、息がマイクを横切るようになり、影響が減ります。
RODEの案内では、ポップフィルターは口とマイクのあいだに置き、マイクから約5cm離して、振動板(ダイアフラム)と平行に立てます。口とマイクの距離は、ほとんどのRODEのマイクで6〜10cmが推奨です。距離の目安はマイクごとに違うので、お使いのマイクの説明書も確認してください。
04録音レベル:音割れしない設定にする
録音レベルは、オーディオインターフェイスのゲインつまみなどで決めます。高すぎると歪みます(クリッピング)。Shureは、レベルメーターが赤いゾーンに入らないようにするよう案内しています。小さく録った音はあとから上げられますが、歪んだ録音は直せません。
目安の数字は、Focusriteの公式ヘルプにあります。余裕を持たせたレベルの例として、ピークが−12dBFS前後になる録音を挙げています。dBFSは、デジタルで扱える上限を0とした単位です。0dBFSの近くで録った複数のトラックは、ミックスで足し合わせると上限を超えて歪むため、歌と伴奏を重ねて仕上げるときに当てはまります。歌は曲の途中で声の大きさが変わるので、試し録りは、いちばん声を張るサビで確かめましょう。

なお、機器によってメーターの表示は違います。赤いゾーンに入らない設定を優先して、目盛りの数字は目安として使います。
05自分の歌を聴きながら録る:ダイレクトモニタリング
Focusriteの説明では、ダイレクトモニタリングは、オーディオインターフェイスが入力の音をパソコンを通さずに直接ヘッドホンへ送る機能です。ほとんど遅れなく聴けます。音はDAW(録音ソフト)にも同時に送られるので、聴きながら録音できます。
Focusriteは、遅れが気になるときは、インターフェイス側のダイレクトモニターをオンにし、録音中のトラックをDAW側でミュートするよう案内しています。インターフェイスが必要かどうかは、「配信にオーディオインターフェイスは必要?」にまとめています。
06マイクを買い替えるなら:歌の録音で見る仕様
録り方を整えてもまだ気になる点があるときは、マイクの仕様を見直します。歌では、最大入力音圧レベル(歪まずに受けられる音の大きさの目安)、つなぎ方と電源、ポップ対策の付属品を確かめます。最大入力音圧レベルは、測定条件がメーカーごとに違うので、数字だけでは優劣を決められません。
| マイク | 型式・指向性 | 周波数特性 | 最大入力音圧レベル | 接続と電源 | ポップ対策 |
|---|---|---|---|---|---|
| Shure SM58 | ダイナミック・カーディオイド | 50〜15,000Hz | 公式の資料に記載なし | XLR(3ピン) | 内蔵の球形ウインドスクリーン(ポップ・フィルター)が息のポップノイズを抑えると、製品ページに書かれている |
| Audio-Technica AT2035 | コンデンサー・カーディオイド | 20〜20,000Hz | 148dB SPL(−10dBパッド使用時は158dB SPL) | XLR。ファンタム電源(11〜52V)が必要 | 付属品はショックマウントなど。ポップガードの記載はなし |
| Audio-Technica AT2020USB-X | コンデンサー・カーディオイド | 20〜20,000Hz | 公式の資料で確認できず | USB Type-C(USBバスパワー) | 付属品の一覧に、ポップガードは含まれない |
| RODE NT1 5th Generation | ラージダイアフラム・コンデンサー・カーディオイド | 20Hz〜20kHz | 142dB SPL | XLRとUSB-Cの両対応(XLRはファンタム電源P48、USBは5V) | ポップフィルター付きのショックマウントが付属 |
| Shure MV7+ | ダイナミック・カーディオイド | 50〜16,000Hz | 128dB SPL(USB-C、最小ゲイン・フラットモード時) | USB-CとXLR。USB-Cはバス電源 | ウィンドスクリーンが付属。ポップガードの記載はなし |
各社の公式ページと取扱説明書に書かれた仕様を、2026年10月27日に確かめた内容です。ダイナミックとコンデンサーの違いは「コンデンサーマイクとダイナミックマイクの違い」で、USBとXLRの選び方を含めた全体像は「VTuberの配信用マイクの選び方」で説明しています。
07録ったあと:YouTubeに出すときの音声
歌ってみたをYouTubeにアップロードするときの音声は、YouTubeのヘルプで推奨設定が示されています。コーデックはAAC-LC、Opus、Eclipsaオーディオ、サンプルレートは48kHzで、ビットレートの目安はモノラルが128kbps、ステレオが384kbpsです。
YouTubeのヘルプには、音量レベルとサウンドミキシングが自動で調整されることがある、と書かれています。「一定音量」は、動画の中の音の大きい部分と小さい部分の差を抑える機能です。「音声ブースト」は、周囲の音を抑えて会話を強調します。どちらも視聴者がプレーヤーの設定で切り替えられます。
クリエイターは、パソコン版のYouTube Studioで、音質の改善処理を今後のアップロードに適用するかどうかを選べます。すでにアップロードした動画には影響しません。ラウドネス(音量の測定値)の目標値は、公式のヘルプには載っていません。
08歌枠のときに気をつけること
歌枠は生配信なので、録り直しがききません。配信を始める前に、いちばん声を張る曲で、レベルメーターと自分の聞こえ方を確かめておくと安心です。歌う曲の権利の扱いは、「歌枠・歌ってみたの著作権」で説明しています。
09よくある質問
ポップガードは付属していますか?
製品によって違います。上の表のとおり、RODE NT1 5th Generationにはポップフィルター付きのショックマウントが付属し、Audio-Technica AT2020USB-Xの付属品にはポップガードが含まれません。付属品は型番によっても変わるので、買う前に公式ページの付属品の欄を確かめてください。
録音レベルは、どのくらいにすればいいですか?
Shureは、レベルメーターが赤いゾーンに入らないよう案内しています。Focusriteは、余裕を持たせた例として、ピークが−12dBFS前後になる録音を挙げています。機器のメーターの表示に合わせて、まず赤いゾーンに入らない設定にしましょう。
布団の中で録るときの注意は?
Shureは、さらに響きを抑えたいときの方法として布団の中で録る方法を紹介し、かなり暑くなるので注意するよう案内しています。まずは、マイクの後ろに枕や掛け布団を置く方法から試すのがおすすめです。
歌ってみたは、どんな順番で整えればいいですか?
部屋の反響、口とマイクの距離と向き、ポップ対策、録音レベル、ダイレクトモニタリングの順に確かめます。上の図の順です。原因を切り分けやすくなります。
編集部のひとこと
マイクの仕様表を見ていると、新しいマイクが気になってきます。ただ、近づくと低音が強まることも、息が当たることも、録音レベルが高すぎると歪むことも、いま持っているマイクで確かめられます。距離と角度を変えて録り比べると、買い替えが必要かどうかが分かりやすくなります。
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